世界の歴史や神話、英雄の活躍などを韻文(詩の形式)で壮大に語り継いできた長編の物語詩の中で、人類の文学遺産として特に重要とされる代表的な作品の総称です。
古代ギリシャの盲目の詩人ホメロスが作したとされる、西洋文学の最古にして最大の叙事詩です。トロイア戦争におけるギリシャ軍の英雄アキレウスの怒りや、神々が入り乱れる壮絶な戦いと悲劇を描いており、『オデュッセイア』とともに後世のヨーロッパ文学や芸術に決定的な影響を与え続けています。
古代インドの詩人ヴァールミーキが編纂したとされる、ヒンドゥー教の二大叙事詩(もう一つはマハーバーラタ)の一つです。コーサラ国の王子ラーマが、誘拐された愛妻シータを魔王ラーヴァナから奪還するために猿の将軍ハヌマーンらと大冒険を繰り広げる物語で、東南アジア全域の文化に絶大な影響を与えました。
フィンランドの医師エリアス・リョンロートが、民間伝承や神話の歌(ルノ)を収集・編纂して19世紀に完成させた国民的叙事詩です。天地創造から英雄ワイナミョイネンらの魔法や冒険を描いたこの作品は、フィンランド人の民族意識を目覚めさせ、作曲家シベリウスをはじめとする多くの芸術家に霊感を与えました。
日本のアイヌ民族に古くから口承で語り継がれてきた英雄叙事詩(神謡)です。文字を持たなかったアイヌの人々が、独特のメロディとリズムに乗せて、自然の神々(カムイ)や人間の英雄の冒険物語を記憶し語り継いできたものであり、世界的に見ても極めて貴重な無形文化遺産です。