周期表の左下に位置する、アルカリ金属の中で最も激しく反応する放射性元素です。地球全体の地殻をすべて合わせても数十グラムしか存在せず、発見された天然元素としては最後の一つとなりました。キュリー夫人の弟子が祖国にちなんで名付けた、非常に短命で幻のようなレアメタルです。
発見者であるマルグリット・ペレーが、自身の祖国であり師匠キュリー夫人の第二の故郷でもあるフランスにちなんで命名しました。キュリー夫人が名付けたポロニウム(ポーランド)へのオマージュでもあります。
ペレーは元々キュリー研究所の実験助手でしたが、持ち前の才能と根気強さでアクチニウムの純度を高める過酷な実験を成功させ、見事フランシウムを発見。のちにフランス科学アカデミー初の女性会員となりました。
ウランなどの崩壊の過程でごくまれに生まれますが、約22分で半分が消滅してしまうほど極めて短命です。そのため地球全体をくまなく探しても常に20から30グラムしか存在しない、究極の希少元素です。
ナトリウムやカリウムと同じアルカリ金属の仲間で、水に触れると大爆発を起こす性質が周期表の中で最も強いと理論上考えられています。しかし量が少なすぎて誰も実際に水に入れたことはありません。
もしフランシウムを目で見えるほど集めたとしても、自身の強烈な放射線と熱によって一瞬で蒸発してしまうため、肉眼でどのような色や形をしているのかを確認することは物理的に不可能です。
これ以降に発見された元素はすべて加速器や原子炉で作られた人工元素であるため、フランシウムは自然界から発見された最後の元素という、化学の歴史に名を残す重要なマイルストーンとなりました。
体内に入ると腫瘍などの病変部に集まりやすい性質があるため、初期にはがんの診断や治療への応用が期待されました。しかし寿命が短すぎて実用化には至らず、別の元素に役割を譲りました。
実験室で原子を数個単位で人工的に合成するしかなく、作っても数分で消えてしまうため、瓶に詰めて販売することは絶対にできません。そのため価格という概念すら存在しないロマンあふれる元素です。
最新の物理学では、人工的に作ったフランシウム原子に特殊なレーザーを当てて極低温に冷やし、真空の空中にピタッと静止させるという神業のような技術で、未知の物理法則を探る研究が行われています。
あらゆる物質の中で水と最も激しく反応し大爆発するという理論上の性質から、SF作品では一滴で海を蒸発させる究極の化学兵器や、超短時間だけ莫大なエネルギーを放つ幻のコア素材として描かれます。