| 原子量 | [210] |
|---|---|
| 分類 | 第6周期 / 第17族 |
| 状態(常温) | solid |
| 発見者 / 年 | コルソン、マッケンジー、セグレ (1940年 / アメリカ) |
地球の地殻全体を探しても、たった数十グラムしか存在しないと言われる究極に珍しい放射性元素です。あまりにも不安定ですぐに別の元素に変わってしまうため、肉眼で見た人は誰もいません。現在は、がん細胞をピンポイントで破壊する夢の治療薬として最先端の研究が進んでいます。
ギリシャ語で不安定な、という意味のアスタトスが語源です。その名の通り非常に崩壊しやすく、最も長生きするアスタチン210という同位体でも、わずか8時間で半分の量に減ってしまいます。
ウランなどが崩壊する過程で一瞬だけ生まれますが、すぐに別の元素に変わります。そのため、地球の地殻全体をくまなく探しても、常に30グラム程度しか存在しないと言われる究極の幻の元素です。
天然の鉱石から見つけ出すことは不可能に近いため、1940年にアメリカのカリフォルニア大学で、サイクロトロンという巨大な加速器を使ってビスマスに粒子をぶつけることで人工的に合成されました。
アスタチンが出すアルファ線は飛ぶ距離が極めて短いため、ガン細胞にだけ集まる特殊な薬に組み込んで注射すると、周囲の正常な細胞を傷つけずにガン細胞だけを狙い撃ちにする最新治療が期待されています。
もしアスタチンを目で見えるほどの量集めたとしても、自身の凄まじい放射線のエネルギーによって一瞬にして熱となり蒸発してしまうため、肉眼でどのような色や形をしているのかは誰にもわかりません。
周期表ではフッ素や塩素、ヨウ素と同じハロゲン族の真下に位置します。そのため性質はヨウ素によく似ており、人間の体に入ると甲状腺に集まりやすいという特徴が、医療応用の大きな鍵となっています。
実験室で数個の原子レベルで作られ、すぐに消滅してしまうため、瓶に入れて保存することも重さを量ることもできません。当然売買することも不可能なため、価格という概念すら存在しない物質です。
長年、周期表の85番は空席のままでした。多くの科学者が新しい鉱物から見つけたと幻の発表をしては取り消すという騒動が繰り返され、最終的に人工合成で決着がつくまで化学界を大いに悩ませました。
科学者の計算によると、もしアスタチンを1グラム集めることができた場合、1秒間に信じられないほどの崩壊熱を放出し、一瞬で数万度以上の超高温になって大爆発を起こすと考えられています。
存在自体が極限状態であり、塊になれば自己崩壊して凄まじい熱を出すという性質から、SF作品では触れるだけで大爆発を起こす反物質兵器や、幻の超エネルギーコアのモチーフとして密かに扱われます。