キュリー夫人がウラン鉱石の中から執念で発見した、非常に強い放射能を持つ元素です。静電気を空気中のイオンで中和して除去する装置などに使われます。極めて危険な猛毒であり、歴史的な暗殺事件に使われたことで世界中にその恐ろしい名前が知れ渡りました。
発見者のキュリー夫人が、当時ロシア等の支配下で地図から消えていた祖国ポーランドのラテン語名から名付けました。元素名に政治的なメッセージと祖国独立の悲願を込めた歴史的な命名です。
ピッチブレンドという鉱石からウランを取り除いた後も、まだ強い放射線が出ていることに気づき、気の遠くなるような分離作業の末にポロニウムを発見しました。放射能という言葉も彼女が作りました。
ポロニウムが出すアルファ線は空気をイオン化して電気を通しやすくします。これを利用して、レコード盤のホコリを払う静電気除去ブラシや、精密機器工場の静電気を逃がす装置に組み込まれています。
2006年、元ロシアのスパイであるリトビネンコ氏がロンドンのホテルで毒殺される事件が起きました。彼の飲んだ紅茶に微量のポロニウムが混入されており、世界中を震撼させるニュースとなりました。
放射線を出す際に周囲の物質に当たって凄まじい熱を出します。この発熱を利用して、太陽光の届かない深宇宙を飛ぶ探査機や、月面で夜の極寒を耐え抜くための小型の保温ヒーターとして使われます。
タバコの葉は土壌中の肥料から微量のポロニウムを吸収して蓄積する性質があります。喫煙者が煙を吸い込むと肺の奥深くにとどまり、内部から放射線を出し続けるためガンの一因になると指摘されています。
天然にはウラン鉱石1トンの中にわずか0.1ミリグラム以下しか存在しません。現在は原子炉でビスマスに中性子を当てて人工的に作られますが、極めて危険なため一般的な取引価格は存在しません。
地球上で最も危険な毒物の一つと言われ、たった数ミリグラムを体内に取り込むだけで人間の細胞を破壊し死に至らしめます。化学的な毒ではなく、放射線による物理的な破壊という恐ろしさです。
ポロニウムが出すアルファ線は透過力が弱く、体の外にあれば紙一枚で防げます。しかし一度体内に入ると、周辺の細胞にダイレクトに放射線のエネルギーを叩き込むため、内側からのダメージが絶大です。
ガイガーカウンターでも検知しにくく、解剖してもすぐには原因がわからないため、現代のサスペンス映画やスパイ小説において、国家の暗部が使用する究極のステルス毒物としてしばしば描かれます。