どんな強い酸にも溶けない鉄壁の防御力を誇る金属です。極めて小さくても大容量の電気を蓄えられるコンデンサの材料として、世界中のスマホやパソコンの基板に大量に詰め込まれています。人体に全く無害でアレルギーを起こさないため、人工骨や手術の縫合糸としても患者を救う、優しくてタフな元素です。
ギリシャ神話で、水辺に立たされながら水が飲めない永遠の拷問を受けたタンタロス王が語源です。どんな強い酸の中に入れても決して溶け込んでくれない性質から名付けられました。
金やプラチナでさえ溶かしてしまう最強の酸である王水に入れても、タンタルは全く溶けずに元の姿を保ちます。この圧倒的な耐食性から、化学工場の危険な薬品を扱うパイプや容器に欠かせません。
表面にできる酸化膜が電気を蓄える最高の性質を持ちます。これで作ったタンタルコンデンサは、米粒サイズでも大容量の電気を安定して蓄えられるため、スマホやゲーム機の超小型化を実現させました。
体液に全く溶け出さず、人間の免疫細胞からも異物として認識されないほど無害です。そのため、折れた骨を繋ぐボルトや血管を縫う糸など、体内に長期間埋め込む医療器具として安全に使われています。
主要産出国のコンゴ民主共和国では、タンタルを含む鉱石の利権をめぐって激しい武装紛争が起きました。私たちの便利なスマホの裏にある、深刻な社会問題として世界中で議論されています。
紛争問題があるため、現在はテロリストの資金源にならないクリーンなタンタルだけを使うルールが世界中で徹底されています。1グラム数十円と高価なベースメタルであり、リサイクルが急務です。
近年、一部の超高級腕時計のケース素材としてタンタルが採用されています。非常に重くて傷がつきにくく、独特の深みのあるブルーグレーの輝きが、渋くてカッコいいとマニアに大人気です。
ランタンと同じように、ガラスに酸化タンタルを混ぜると光を曲げる力(屈折率)が飛躍的に高くなります。スマートフォンの小さなカメラレンズを高性能にするための隠し味としても重宝されています。
非常に重くて密度が高く熱にも強いため、戦車の分厚い装甲を撃ち抜く特殊な弾丸(徹甲弾)や、ミサイルの爆発力を高めるためのパーツとして軍事分野でも秘密裏に活躍しています。
その圧倒的な耐熱性と絶対にサビない耐久力から、映画ターミネーターに登場するサイボーグの超合金骨格を構成するメイン素材のひとつとして、架空の化学設定に組み込まれています。