私たちの体から夜空の星まで、宇宙のあらゆる生命と物質の基本となる元素です。原子の結びつき方次第で、手の中の柔らかい鉛筆の芯(黒鉛)にも、世界で一番硬く輝く宝石(ダイヤモンド)にも姿を変えます。地球の過去と未来を握る、まさに千変万化の魔法の元素です。
ラテン語で木炭を意味するcarboが名前の由来です。大昔の人々が木を燃やして炭を作っていた頃から知られており、人類の歴史と文明の発展を古代からずっと支え続けてきました。
炭素原子が地球の奥深くで超高圧と超高温にさらされ、ピラミッド型にガッチリと結びついたのがダイヤモンドです。自然界で最も硬い物質でありながら、実は燃やすと二酸化炭素になって消えてしまいます。
ダイヤモンドと同じ炭素100パーセントですが、原子が層状に重なった黒鉛(グラファイト)は非常に柔らかくポロポロ剥がれます。実は金属ではないのに電気を通すという、少し変わった性質を持っています。
石炭や鉛筆の芯なら1グラム数円にも満たない安さですが、美しいダイヤモンドになれば1グラム数百万円以上に跳ね上がります。同じ元素なのに、原子の並び方だけでこれほど価値が変わる元素は他にありません。
人間の体の約20パーセントは炭素でできています。タンパク質やDNA、さらには食べたご飯(炭水化物)に至るまで、生命を形作るための複雑な分子の骨組みとして、炭素は絶対に欠かせない存在なのです。
遺跡から発掘された土器や化石の年代を特定する放射性炭素年代測定という技術があります。大昔の生物の体内に残された特殊な炭素の量を調べることで、何万年も前の歴史を正確に読み解くことができます。
炭素の繊維を編み込んで固めたカーボンファイバーは、鉄の4分の1の軽さで10倍の強度を持ちます。最新の旅客機やレーシングカー、テニスのラケットなど、極限の性能が求められる分野で大活躍しています。
1985年に発見されたフラーレンは、60個の炭素原子がまるでサッカーボールのような美しい球体に結びついた不思議な物質です。この発見により、ナノテクノロジーという新しい科学の扉が開かれました。
炭素と酸素が結びついた二酸化炭素は、地球を毛布のように包み込んで温める温室効果を持っています。少なすぎると地球は凍りつき、多すぎると温暖化が進んでしまうため、絶妙なバランスが求められています。
炭素原子が筒状になったカーボンナノチューブは、理論上、地球と宇宙ステーションを繋ぐ宇宙エレベーターのケーブルに使えるほど頑丈です。SFの夢を現実にするかもしれない究極の未来素材として研究中です。