鉛を硬くするために混ぜられるほか、プラスチックが燃え広がるのを防ぐ難燃剤として重要な役割を果たします。古代エジプトではアイシャドウとして使われていたほど歴史が古いですが、強い毒性を持つため取り扱いには注意が必要です。縁の下の力持ちでありながら危険な香りも漂う元素です。
アンチモンは自然界で単独で見つかることがなく、常に他の鉱物と結びついているため、ギリシャ語で孤独を嫌うという意味の言葉が語源になったと言われています。さみしがり屋な元素です。
輝安鉱というアンチモンの鉱石を砕いた黒い粉は、古代エジプトの女王クレオパトラも愛用したアイシャドウでした。目を大きく見せるだけでなく、強い日差しや虫除け、魔除けの目的もありました。
車のバッテリーに使われる鉛は柔らかすぎるため、アンチモンを少し混ぜて硬く丈夫にしています。この合金のおかげでバッテリーの寿命が延び、車へ安定して電力を供給できるようになりました。
プラスチックやゴムにアンチモンの化合物を練り込むと、火がついても酸素を遮断して燃え広がるのを強力に防ぎます。テレビや家電製品のカバーなど、火災予防に欠かせない重要な素材です。
鉛とスズにアンチモンを混ぜた活字合金は、冷えて固まる時に少しだけ膨らむ性質があります。このおかげで型の隅々まで金属が行き渡り、くっきりと美しい文字のハンコを作ることができました。
中国などの限られた地域で大量に採掘されており、価格は1グラム数円程度と安価です。しかし最先端のハイテク産業に不可欠なため、供給がストップすると世界中が困る重要なレアメタルに指定されています。
アンチモンを含む金属で作られた杯にワインを入れておくと、酸で毒成分が溶け出します。これを飲むと激しく嘔吐するため、昔は胃の中を空っぽにする荒療治の薬として貴族の間で使われました。
中世の錬金術師たちは、アンチモンを使えば他の金属を黄金に変えられると信じて、日夜実験を繰り返しました。その過程で多くの化学的な発見が生まれ、近代化学の基礎を築くきっかけとなりました。
毒性が強い反面、ごく少量をシリコンなどに混ぜると、電気の通りやすさを自由にコントロールできる優秀な半導体になります。最先端の電子機器を動かすための要として、なくてはならない存在です。
SF小説などでは、その毒性と硬さを活かして、特定のモンスターやエイリアンを確実に倒すための特殊なアンチモン弾が登場することがあります。暗殺や対怪物用のマニアックな武器として描かれます。