| 原子量 | 114.82 |
|---|---|
| 分類 | 第5周期 / 第13族 |
| 状態(常温) | solid |
| 発見者 / 年 | ライヒ、リヒター (1863年 / ドイツ) |
非常に柔らかく、人間の歯で噛むと跡がつくほどです。しかしスズと混ぜて作る透明な膜(ITO)は電気を通す魔法の性質を持ち、スマートフォンやテレビの液晶ディスプレイ、タッチパネルの製造に絶対に欠かせない、現代社会のデジタルライフを支える要の元素です。
ラテン語で藍色(インディゴ)を意味する言葉が語源です。鉱石を分光器という光の成分を分析する機械で調べたとき、非常に美しい藍色の線が現れたことからこのロマンチックな名前がつけられました。
金属でありながら非常に柔らかいのが特徴で、ナイフで簡単に切ることができ、人間の歯で噛むとくっきりと歯形が残るほどです。手の爪でこすっただけでも傷がつくほどデリケートな素材です。
純度の高いインジウムの棒を耳元で曲げると、ピキピキという奇妙な音が聞こえます。これは金属の結晶がこすれ合う音で錫鳴り(すずなり)と呼ばれ、インジウムが泣いているとも表現されます。
インジウムとスズの酸化物で作ったITOという膜は、ガラスのように透明なのに電気を通すという奇跡の性質を持ちます。私たちがスマホの画面を指でなぞって操作できるのは、この膜があるおかげです。
テレビの画面が分厚いブラウン管から薄い液晶ディスプレイへと進化し、さらに大画面化できたのもITO膜のおかげです。インジウムがなければ、現代の壁掛けの巨大テレビは存在しませんでした。
亜鉛鉱石からわずかにしか取れないレアメタルです。スマホやテレビの爆発的な普及により需要が急増し、価格が高騰しました。現在は世界的な供給不足が心配されており、安定確保が課題です。
天然のインジウムが枯渇するのを防ぐため、使い終わったスマホや液晶ディスプレイからインジウムを回収して再利用する都市鉱山のリサイクル技術が、日本をはじめ世界中で熱心に研究されています。
スマホの普及に伴い、ITO膜を製造する工場の労働者がインジウムの粉末を吸い込み、重い肺の病気(間質性肺炎)になる事例が報告されました。現在では厳重な防塵対策が義務付けられています。
毒性が低く非常に柔らかいため、昔から歯科治療の合金に微量だけ混ぜて使われることがあります。硬すぎる銀歯が周りの健康な歯を傷つけないように、クッションのような役割を果たしてくれます。
スタートレックなどのSF作品には透明なアルミニウムなどの架空の素材が登場しますが、透明なのに電気を通し金属の性質を持つインジウムのITO膜は、まさに現実世界に存在する透明な金属と言えます。