かつては充電式のニカド電池として幅広く活躍していましたが、人体への毒性が非常に強く、日本で発生した公害イタイイタイ病の原因物質として歴史に深い爪痕を残しました。鮮やかな黄色の絵の具の原料でもあり、美しさと恐ろしさを併せ持つ元素です。
ギリシャ神話に登場するテーバイの建国者カドモス、または古い時代の亜鉛鉱石の呼び名であるカドミアが語源です。亜鉛鉱石の中に不純物としてわずかに混ざっていたことから発見されました。
硫黄と結びついた硫化カドミウムは、色あせない非常に鮮やかな黄色(カドミウムイエロー)になります。ゴッホの名画ひまわりの力強い黄色は、このカドミウムの絵の具によって描かれています。
昔は繰り返し充電できるニカド電池(ニッケル・カドミウム電池)として、ビデオカメラや携帯電話を動かしていました。現在はより軽くて安全なリチウムイオン電池に主役の座を譲っています。
富山県の神通川流域で発生した公害、イタイイタイ病の主な原因物質です。鉱山から流れ出たカドミウムが米を通じて人体に入り込み、骨がもろくなって激しい痛みを引き起こす凄惨な被害を出しました。
環境と人体への悪影響が大きいため、ヨーロッパではRoHS指令という厳しい法律によって、電子機器へのカドミウムの使用が原則として禁止されています。世界的に使わない方向へ進んでいます。
タバコの葉は土の中のカドミウムを吸収しやすい性質があります。そのため、タバコの煙には微量のカドミウムが含まれており、喫煙者は非喫煙者よりも体内のカドミウム濃度が高くなると言われています。
カドミウムは中性子を非常によく吸収するという特別な性質を持ちます。これを利用して、原子力発電所でウランの核分裂反応が行き過ぎないように抑え込むための制御棒の材料として使われています。
亜鉛を精錬する際に必ず副産物として出てくるため、生産量は安定しており価格も安価です。しかし毒性が強いため、製品への使用よりも安全に廃棄やリサイクルするための処理コストが問題になります。
貝類やイカなどの内臓にはカドミウムが蓄積しやすい性質があります。通常食べる量であれば健康に問題はありませんが、食物連鎖を通じて自然界を循環する毒性金属として監視が続けられています。
1984年の映画ゴジラにおいて、放射能を吸収して生きるゴジラの核分裂を止めるための架空の兵器カドミウム弾が登場しました。原子炉の制御棒の仕組みを怪獣退治に応用した見事なSF設定です。