地球上の自然界には存在せず、人類が初めて人工的に作り出すことに成功した記念すべき第一号の元素です。すべてが放射能を持つという危険な性質を持ちながら、その特殊な光を利用してガンなどの病気を発見する医療用の画像診断薬として、毎日世界中で多くの命を救っています。
ギリシャ語で人工を意味するテクネトスが名前の由来です。自然界でどうしても見つからなかった幻の43番元素を、人類が初めて加速器という機械を使って人工的に作り出した歴史的快挙の証です。
周期表の生みの親メンデレーエフは、この場所にエカマンガンという未知の元素があると予言していました。多くの科学者が発見を報告しましたがすべて偽物で、最終的に人工合成で決着しました。
テクネチウムはすべての同位体が放射能を持ち、時間の経過とともに別の元素に崩壊してしまいます。そのため、地球が誕生した時にあったテクネチウムは、はるか昔にすべて消滅したのです。
テクネチウム99mという種類は、体内に注射すると骨の異常な細胞に集まる性質があります。そこから出る微弱な放射線を特殊なカメラで撮影し、病気を早期発見する大活躍をしています。
医療用に使われるテクネチウム99mは、わずか6時間で放射線を出す能力が半分になる特徴があります。すぐに安全な物質に変わるため、患者の被ばくを最小限に抑えることができるのです。
寿命がたった6時間しかないため、工場で作り置きすることができません。親玉であるモリブデン99の状態で病院へ空輸され、使う直前に病院内の装置でテクネチウムを絞り出すという綱渡りです。
地球上には天然のテクネチウムはありませんが、遠く離れた赤色巨星という年老いた星の光を分析すると、テクネチウムが存在するサインが見つかりました。宇宙のどこかで今も生まれ続けています。
鉄にテクネチウムをほんの少し混ぜるだけで、どんな過酷な環境でも絶対にサビない夢のような合金になります。しかし放射能を持っているため、安全性の問題から実用化には至っていません。
医療用に極微量が作られるだけであり、まとまった金属として売買されることはありません。放射性廃棄物の中から抽出することも可能ですが、莫大なコストがかかるため実質的な価格はつけられません。
人工的に作られたというロマンあふれる生い立ちから、SF小説などでは、研究所で作られたクローン人間やサイボーグの青く光る人工血液の成分として、テクネチウムの名前が使われることがあります。