キラキラ輝く偽物のダイヤモンド「キュービック・ジルコニア」の正体として有名ですが、真の姿は熱や放射線に極めて強いタフな金属です。中性子を吸収しない特殊な性質から、原子力発電所の核燃料を包むカバーとして絶対に欠かせない存在であり、人類の巨大なエネルギーを最前線で制御しています。
ペルシャ語で金色を意味するツァルグンという言葉が語源です。古くからジルコンと呼ばれる天然の美しい鉱石として知られており、ダイヤモンドの代用品として古代人にも愛されていました。
テレビショッピングでおなじみのキュービックジルコニアは、二酸化ジルコニウムを人工的に結晶させたものです。本物のダイヤより少し重いですが、プロでも肉眼で区別できないほど美しく輝きます。
ジルコニウム最大の使い道は、原子力発電所の核燃料ペレットを包む被覆管という金属のパイプです。放射線や高温の高圧水に耐え、ウランの核分裂を邪魔しないという、奇跡的な性質を持っているからです。
自然界のジルコニウム鉱石には、性質がそっくりなハフニウムという元素が必ず混ざっています。しかしハフニウムは原子炉の火を消してしまう性質があるため、分離するのに途方もない苦労がかかりました。
金属を錆びさせて酸素と結びつけた酸化ジルコニウムは、金属よりも硬いファインセラミックスになります。絶対に錆びず、軽くて切れ味が長持ちする真っ白なセラミック包丁の材料として大人気です。
金属アレルギーを起こしにくく人体と親和性が高いため、チタンと同じように人工関節や歯科治療のインプラントの土台に使われます。セラミック製なので白く美しく、本物の歯のような自然な仕上がりになります。
鉱石のジルコンはオーストラリアなどで大量に採掘されるため安価ですが、原子炉用にハフニウムを完全に取り除いた純度の高い金属ジルコニウムは製造が難しく、1グラム数百円とやや高価に取引されます。
粉末状にしたジルコニウムは、空気に触れると一瞬で激しく燃え上がり、強烈な火花を散らします。そのため、軍用の強力な焼夷弾や、ロケットエンジンの確実な点火装置として利用されることがあります。
オーストラリアで見つかったジルコンの結晶は、地球上で見つかっている最も古い鉱物です。約44億年前のマグマの海の中でできたとされ、地球が誕生した直後の環境を教えてくれるタイムカプセルです。
数千度の熱にも耐えられるタフなイメージから、SF小説などでは大気圏を突入する宇宙船の耐熱シールドや、ビーム兵器の熱を跳ね返す装甲板の素材としてジルコニウム合金が設定されるのがお約束です。