スウェーデンの小さな村の採石場から発見された、レアアース(希土類)の代表格です。かつてカラーテレビの赤い色を出すために世界中で大量に使われ、映像技術を飛躍させました。現在は絶対に電気抵抗がゼロになる超伝導材料の要として、リニアモーターカーなどの未来技術を牽引しています。
スウェーデンのイッテルビーという小さな村の採石場から見つかった黒い石。なんとこの村の名前から、イットリウム、イッテルビウム、テルビウム、エルビウムという4つもの元素名が生まれました。
昔のブラウン管カラーテレビは、イットリウムとユーロピウムを混ぜた赤い蛍光体のおかげで、圧倒的に鮮やかな赤色を映し出すことができるようになりました。世界中で飛ぶように売れた家電の立役者です。
イットリウムとバリウム、銅などを混ぜて液体窒素で冷やすと、電気抵抗が完全にゼロになる高温超伝導という魔法のような現象が起きます。強力な磁石を作り出し、リニアモーターカーを浮上させます。
青色LEDの光を黄色の蛍光体に当てて白色の光を作るのが現代の照明の仕組みです。この黄色の蛍光体(YAG)の主成分がイットリウムであり、私たちの家や街の明るさを根本から支えています。
安価なアクセサリーに使われるキュービックジルコニアという人工宝石。実はこの石が割れないように安定させるための接着剤のような役割として、イットリウムが数パーセントだけ混ぜられています。
ハイテク産業に不可欠なレアアースの一種ですが、中国などの鉱山から比較的多く採掘されるため、1グラム数十円程度とレアアースの中では安価です。しかし輸出制限によって価格が乱高下するリスクがあります。
イットリウム、アルミニウム、ガーネットで作った人工結晶から発せられるYAGレーザーは、組織を焼き切る力が強く、医療現場のレーザーメスや、タトゥーを消す治療などに幅広く利用されています。
アポロの宇宙飛行士が月から持ち帰った月の石を分析した結果、地球の岩石よりも高い濃度のイットリウムが含まれていることが分かりました。月と地球の成り立ちを解き明かす重要なヒントになっています。
自動車の排気ガスに含まれる有害な成分を分解する触媒として、白金などの貴金属が使われますが、高温でもその効果が落ちないようにイットリウムを添加して助けるという、見えない工夫がされています。
電気抵抗がゼロになり磁石を浮遊させる超伝導の強烈なインパクトから、SF映画やアニメではUFOや空飛ぶ車の反重力機関を構成する未知の超伝導金属として、イットリウムの名前がよく拝借されます。