| 原子量 | 79.904 |
|---|---|
| 分類 | 第4周期 / 第17族 |
| 状態(常温) | liquid |
| 発見者 / 年 | バラール (1826年 / フランス) |
常温でドロドロの液体として存在する、水銀と並んで地球上でたった2つしかない珍しい元素です。強烈な悪臭を放つ赤褐色の液体ですが、プラスチックが燃え広がるのを防ぐ難燃剤や、カメラのフイルムの感光材など、見えないところで私たちの安全や思い出を守っています。
ギリシャ語で悪臭を意味するブロモスが語源です。その名の通り、液体から蒸発した赤いガスを少しでも吸い込むと、鼻や喉が焼け付くように痛む強烈で耐えがたい悪臭を放ちます。
118個ある元素の中で、常温(20度付近)で液体なのは金属の水銀と非金属の臭素の2つだけです。非常に重い液体であり、赤いガスを出しながらドロドロと流れる不気味な姿は悪魔の血のようです。
臭素と銀が結びついた臭化銀は、光に当たると黒く変化する性質があります。これを利用したのがカメラのフイルムであり、デジタルカメラが普及するまで、世界中の人々の大切な思い出を記録し続けました。
カーテンやテレビのプラスチック枠などに臭素化合物を練り込んでおくと、火がついても酸素を遮断して燃え広がるのを強力に防いでくれます。火災の被害を最小限に抑える難燃剤として大活躍しています。
かつて臭素の化合物(臭化カリウムなど)は、興奮を鎮めたり眠りに導いたりする鎮静剤として広く使われていました。しかし、飲み過ぎると精神に異常をきたす副作用があったため、現在では別の薬に代わっています。
臭素は海水の中にわずかに溶け込んでいますが、中東の死海には普通の海水の約100倍もの高濃度の臭素が含まれています。そのため、イスラエルなどが世界の臭素生産において大きなシェアを持っています。
古代ローマ時代、王族だけが着ることを許されたティリアンパープルという非常に高価な紫色の染料がありました。これは何万匹もの巻貝から抽出されるのですが、実はその色素の正体は臭素の化合物なのです。
死海の塩水などを利用して大量に生産できるため、1グラム数円程度と非常に安価です。しかし猛毒であり、こぼすと赤い有毒ガスが発生して大惨事になるため、輸送や保管には厳重な注意が必要です。
難燃剤などとして使われた臭素化合物の一部が成層圏に達すると、フロンガス(塩素)と同じように地球を守るオゾン層を強力に破壊してしまうことが判明し、現在では一部の使用が厳しく規制されています。
古いSF映画やアニメの怪しい実験室には、フラスコの中でボコボコと沸騰しながら不気味な赤い煙をモクモクと出す液体が必ず描かれます。あのビジュアルの元ネタは、まさに蒸発する臭素の姿そのものです。