光を当てると電気が通りやすくなる不思議な性質を持ち、かつてはコピー機の感光ドラムとして世界中のオフィスで活躍しました。人間にとっては老化を防ぐための必須ミネラルですが、ほんの少し適量を超えるだけで猛毒に変わるため、取り扱いや摂取量には非常にシビアな元素です。
一つ前に発見された性質が似ているテルル(ラテン語で地球)にちなんで、ギリシャ神話の月の女神セレーネから名付けられました。地球と月のように、テルルとセレンは常に対になって語られる兄弟元素です。
セレンが他の元素と結びついた化合物は、想像を絶する悪臭を放つことで有名です。口に入れると息がニンニクや腐った大根のような激臭になるため、化学者たちからは非常に嫌がられる元素の一つです。
暗闇では電気を通しませんが、光を当てた瞬間だけ電気を通す性質(光導電性)があります。この性質を利用して、光が当たった部分のインクだけを紙に転写する昔のコピー機の心臓部として大活躍しました。
セレンとカドミウムを混ぜた顔料をガラスに練り込むと、信号機の赤色や車のテールランプのような、非常に鮮やかで透き通ったルビー色(セレン赤)を作り出すことができます。
セレンの化合物(硫化セレン)には、カビなどの真菌の繁殖を強力に抑える働きがあります。そのため、海外では深刻なフケやかゆみを治療するための薬用シャンプーの有効成分としてよく使われています。
人間の体内で、活性酸素という細胞をサビさせる(老化させる)有害な物質を分解する酵素のパーツとして働きます。アンチエイジングに必要な必須ミネラルですが、サプリでの過剰摂取は厳禁です。
人間にとって必要な栄養素ですが、必要量と中毒を起こす毒の量の差が非常に小さい元素です。摂りすぎると髪の毛や爪が抜け落ちたり、最悪の場合は命に関わるため、素人のサプリメント利用は危険です。
セレンも銅を精製する際の泥状の不純物(スライム)から回収されます。世界中で一定の需要があるため、1グラム数十円程度で取引されています。日本は世界トップクラスのセレン生産国でもあります。
1980年代のアメリカで、農業用の排水から流れ出たセレンが湖に蓄積し、そこを利用する渡り鳥が大量に奇形になったり死亡したりする悲しい環境問題が起きました。わずかな量でも生態系を狂わせます。
SFコメディ映画エボリューションにおいて、地球を侵略するエイリアンを倒すための決定的な弱点として、フケ止めシャンプーに含まれるセレンが使われるという、爆笑のクライマックスが描かれます。