かつて初期のトランジスタ(半導体)の主役として電子機器の発展を支えた元素です。光の屈折率が非常に高いため、現在は光ファイバーの芯材や暗視カメラのレンズとして活躍中。健康器具ブームで有名になりましたが、科学的な効果には謎が多いというミステリアスな一面もあります。
1886年にドイツの化学者ヴィンクラーが銀の鉱石から発見し、祖国のラテン語名ゲルマニアにちなんで名付けました。ガリウム(フランス)に続き、愛国心が込められた元素名の一つです。
この元素もメンデレーエフが未発見の段階でエカケイ素として予言していました。ヴィンクラーの発見によって予言通りの性質が確認され、周期表の完成度がさらに高まる歴史的な瞬間となりました。
シリコンが普及する前、1950年代のトランジスタラジオの心臓部にはゲルマニウムが使われていました。しかし熱に弱く壊れやすかったため、やがて安くて熱に強いシリコンに主役の座を奪われました。
見た目は銀色の金属ですが、赤外線をガラスのように透過するという不思議な性質があります。この性質を活かして、暗闇でも熱を感知できるサーモグラフィや暗視カメラの特殊なレンズとして使われています。
ガラスに少しだけゲルマニウムを混ぜると、光を曲げる力(屈折率)が大きくなります。インターネットの通信を支える光ファイバーの芯に使うことで、光の信号を逃さず遠くまで運ぶことができます。
ゲルマニウムブレスレットなどの健康器具がブームになりましたが、マイナスイオンで血流が良くなるという医学的・科学的な根拠は明確に証明されていません。一部の思い込み効果も大きいと言われています。
健康に良いと信じてゲルマニウムが溶けた水を長期間飲み続けた人が、重篤な腎臓障害を引き起こして死亡する痛ましい事故が起きています。無機ゲルマニウムを体内に取り込むのは大変危険です。
自然界にまとまった鉱床がなく、石炭や亜鉛の残りかすから抽出するため抽出コストがかかります。1グラム数百円とやや高価であり、光ファイバーの廃材からリサイクルする技術が重要視されています。
宇宙空間の過酷な環境では、シリコンよりもゲルマニウムをベースにした太陽電池の方が効率よく発電できます。人工衛星や火星探査機など、絶対に失敗できない宇宙ミッションを支える頼もしい存在です。
SFではありませんが、音楽業界では1960年代の伝説的なギターエフェクター(ファズ)にゲルマニウムトランジスタが使われており、現代の部品では再現できない独特の温かい歪み音がマニアに神格化されています。