鉄の身代わりに自分がサビることで鉄を守るという、自己犠牲の精神を持った健気な金属です。トタン屋根やガードレールのサビ止めメッキとして大活躍しています。さらに人間の味覚を正常に保つために絶対に欠かせない必須ミネラルでもあり、工業から健康まで幅広く支えています。
炉の中で精製される時に、ギザギザしたトゲのような形の結晶ができることから、ドイツ語でギザギザや尖ったものを意味するツィンケ(Zinke)が語源になったと言われています。
亜鉛最大の使い道は鉄のメッキ(トタン)です。鉄よりも酸素と結びつきやすい性質があるため、傷がついても亜鉛が先にサビて壁となり、内部の鉄がサビるのを命がけで防いでくれる自己犠牲の金属です。
銅と亜鉛を混ぜた合金を黄銅(真鍮)と呼びます。配合を変えることで美しい黄金色になるため、日本の五円玉をはじめ、世界中の硬貨やアクセサリー、仏具など、金(ゴールド)の代用品として古くから愛されてきました。
人間の舌にある味を感じる細胞(味蕾)が新しく生まれ変わるために、亜鉛が絶対に必要です。食生活が乱れて亜鉛が不足すると、何を食べても味がしない味覚障害になってしまうため、牡蠣やレバーを食べるのがおすすめです。
1800年、イタリアのボルタが発明した世界初の電池は、亜鉛の板と銅の板を重ねて塩水を挟んだものでした。亜鉛が溶け出して電子を放出するこの仕組みは、現代のアルカリ乾電池にもそのまま引き継がれています。
亜鉛と酸素が結びついた酸化亜鉛は、真っ白な粉末で紫外線を強力に跳ね返す性質があります。そのため、夏の海で塗る日焼け止めクリームや、赤ちゃんの肌荒れを防ぐベビーパウダーの主成分として大活躍しています。
世界中で安定して採掘されるため、1グラム数円程度と非常に安価なベースメタルの一つです。鉄の強度を保ち寿命を延ばすために絶対に欠かせない存在であることから、産業のビタミンとも呼ばれ重宝されています。
タンパク質を合成して髪の毛や爪を新しく作る働きを助けるため、薄毛予防や美髪に効果があると言われています。育毛剤やサプリメントの成分表を見ると、必ずと言っていいほど亜鉛(ジンク)の名前が入っています。
亜鉛合金は低い温度でドロドロに溶け、金型に流し込むと精密な形をスピーディに大量生産できるダイカストという製法に最適です。トミカなどのミニカーがズッシリと重くて丈夫なのは、この亜鉛合金のおかげです。
終末世界や無人島でのサバイバルを描くSFや漫画では、主人公が拾った亜鉛メッキの釘と銅線をレモンやジャガイモに刺して即席の電池を作り、無線機を動かすという科学知識を使った熱い展開のキーアイテムになります。