すべての金属の中で最も軽く、カッターナイフで切れるほど柔らかい性質を持ちます。水に触れると激しく反応するため自然界には単体で存在しません。現代ではスマートフォンや電気自動車のバッテリーの主役として、デジタル社会を根本から支えています。
ギリシャ語の「石(lithos)」が語源です。同じ仲間のナトリウムやカリウムが植物の灰から見つかったのに対し、リチウムは鉱物(石)から発見されたという違いを強調するために名付けられました。
電気自動車の普及により、バッテリー材料としての需要が爆発的に増加しています。白い金とも呼ばれ、価格が大きく乱高下する傾向があり、世界中で資源の確保をめぐる激しい競争が繰り広げられています。
2019年、リチウムイオン電池の開発に大きく貢献した日本の吉野彰氏ら3名にノーベル化学賞が授与されました。小型で強力な電池が生まれたことで、今のモバイル社会が実現したと言っても過言ではありません。
驚くべきことに、炭酸リチウムは医療の現場で「気分安定薬」として広く処方されています。脳内の神経伝達物質に働きかけると考えられており、双極性障害(躁うつ病)の治療などに大きな効果を発揮します。
リチウムは密度が水の約半分しかなく、全金属の中で最も軽いという特徴があります。そのため、金属の塊でありながら水に入れるとプカプカと水面に浮き上がる、非常に不思議な光景を見ることができます。
水に触れると水素ガスを発生させながら激しく発熱・反応するため、取り扱いは非常に危険です。実験室などでは、空気中の水分とも反応しないように、必ず石油や鉱物油の中に沈めて厳重に保管されます。
リチウムの化合物を炎の中に入れると、非常に美しい深紅色(赤色)の炎色反応を示します。夏の夜空を彩る打ち上げ花火の鮮やかな赤い色は、このリチウムの性質を利用して作られています。
ビッグバンの時に水素やヘリウムと一緒に少しだけ生まれましたが、星の中心の熱で壊れやすい性質があります。そのため、宇宙全体で見てもリチウムの量は意外なほど少なく、謎が多い元素でもあります。
アルミニウムにリチウムを少し混ぜた「アルミリチウム合金」は、軽さを保ちながら非常に丈夫になります。スペースシャトルの燃料タンクや、最新型の旅客機の胴体など、宇宙航空分野で重宝されています。
高性能バッテリーの絶対的な必須材料であることから、近未来SF作品では「石油に代わって世界の覇権を握るための重要な戦略資源」として描かれることが多く、国家間の争いの火種としてよく登場します。