鮮やかで吸い込まれるような美しい青色(コバルトブルー)の顔料として、古代から芸術家たちに愛されてきた金属です。現在ではスマートフォンのバッテリーや電気自動車に欠かせないレアメタルとして、世界中で激しい資源争奪戦が繰り広げられる主役になっています。
ドイツの鉱夫たちが、銀に似ているのに溶かしても銀が取れず、毒ガスを出す厄介な鉱石を山の精霊コボルトの仕業だと呼んだのが語源です。ファンタジーRPGに登場するモンスターと同じ名前です。
コバルトをガラスや陶器に混ぜると、非常に美しく深みのある青色になります。古代エジプトのツタンカーメンのマスクの青い部分や、中世ヨーロッパの美しいステンドグラスにもこの技術が使われています。
現代社会で最も重要な使い道はリチウムイオン電池の材料です。コバルトを使うとバッテリーが熱暴走しにくく長持ちするため、スマートフォンや電気自動車の進化に絶対に欠かせない存在となっています。
世界の生産量の大部分がコンゴ民主共和国に集中しています。採掘を巡る過酷な労働や紛争問題が絡むため価格変動が激しく、1グラム数円から数十円で取引される、現代の血塗られたダイヤモンドとも呼ばれる金属です。
実は人間の体にも微量に必要な必須ミネラルです。血液を作るために欠かせないビタミンB12(別名赤いビタミン)の中心には、なんとコバルト原子が鎮座しており、不足すると悪性の貧血を引き起こします。
塩化コバルトを水に溶かした液体は薄いピンク色ですが、熱を加えて水分を飛ばすと鮮やかな青色に変化します。この性質を利用して、スパイが手紙を書くためのあぶり出しのインクとして使われていました。
コバルトにクロムなどを混ぜた合金は、非常に高温になっても硬さを失わず、摩擦にも強いという驚異の性質を持ちます。そのため航空機のジェットエンジンや、巨大な金属を切るための刃物に使われます。
人工的に作られたコバルト60という放射性同位体は、ガン細胞を破壊する強力なガンマ線を出します。医療現場での放射線治療や、医療器具の殺菌消毒など、人命を救うための重要な技術として活躍しています。
昔のお土産屋さんにあった、天気によって色が変わる人形や造花。あれは塩化コバルトが湿気を吸うとピンク色(雨)になり、乾燥すると青色(晴れ)になる性質を利用した、立派な化学のおもちゃなのです。
冷戦時代のSF映画や小説では、爆発すると強烈な放射能を撒き散らして地球の生命を絶滅させるコバルト爆弾という終末兵器がよく登場しました。理論上は作れるため、人類の滅亡の象徴として恐れられました。