地動説を提唱した天文学者コペルニクスにちなんで命名されました。寿命が数秒で用途はありませんが、水銀の仲間でありながら相対論的効果によって常温で気体になる可能性が指摘されるなど、超重元素の常識を覆す性質を秘めています。宇宙の真理を書き換えた偉人の名にふさわしい、ミステリアスな元素です。
太陽が宇宙の中心であり地球が動いているという地動説を提唱し、人類の宇宙観を根本から覆したニコラウス・コペルニクスにちなんで名付けられました。科学革命の最大の功労者へのリスペクトです。
太陽の周りを回る惑星の軌道と、原子核の周りを回る電子の軌道は、物理学的に美しい類似性を持っています。天文学者の名前がミクロの極致である元素に付けられたのは、この深いつながりがあるためです。
ドイツの重イオン研究所が、鉛208の標的に亜鉛70のビームを衝突させて合成に成功しました。これがドイツチームによる新元素連続発見の最後を飾る、冷たい核融合技術の素晴らしい集大成となりました。
周期表では常温で液体の水銀の真下に位置します。しかし原子核が重すぎるため電子が光速に近い速度で回る相対論的効果が働き、金属でありながら常温で気体の希ガスのように振る舞うと予想されています。
最初はコペルニクスの綴りからCpという記号が提案されました。しかし過去にルテチウムの旧名であるカシオペイウムの略称としてCpが使われていた歴史があったため、混乱を避けてCnに変更されました。
目に見える量を作ることは不可能であり、もし数個の原子を作れても数秒で別の元素に変わってしまいます。金属なのか気体なのかという議論すら、ごくわずかな原子を使った極限の実験で確かめられています。
コペルニシウムが気体のように振る舞うかを確かめるため、金で作られた極低温の検出器に原子をくっつけるという神業のような実験が行われ、実際に水銀よりも金属結合が弱いことが証明されました。
この112番を最後に、ドイツの研究所による単独での新元素発見はいったん幕を下ろします。ここから先は、日本やロシア、アメリカなど世界中を巻き込んだ総力戦の時代へと突入していくのです。
超重元素の世界では、私たちが知っているメンデレーエフの周期表の縦のルールがそのまま通用しなくなってきます。コペルニシウムは、その物理法則の歪みを観察するための最前線の舞台です。
地動説の提唱者の名と、常温で気体になる重金属という奇妙な性質から、SF作品では宇宙船の反重力推進エンジンの特殊な冷媒や、次元潜航艇のバラストガスとしてマニアックに設定されます。