この元素を合成した重イオン研究所があるドイツの科学都市ダルムシュタットにちなんで名付けられました。寿命が数千分の一秒しかない超重元素で、用途はありません。110番というキリの良い数字と街の名前が融合した、ドイツの基礎科学の底力を世界に証明するモニュメント的な物質です。
新元素を立て続けに発見した重イオン研究所の所在地であるドイツの都市名がそのまま元素名になりました。大学や研究機関が集まる科学都市としての誇りを周期表に永遠に刻み込みました。
107番のボーリウムから112番のコペルニシウムまでの6つの超重元素を連続で発見するという、ドイツの重イオン研究所の黄金時代を象徴する偉大な成果の一つです。アメリカとロシアの二強時代を完全に打破しました。
鉛208の標的にニッケル62のビームを衝突させる手法で合成されました。より重いビームを加速し、原子核が壊れないギリギリのエネルギーで融合させるという、加速器の精密な調整技術の賜物です。
ドイツでも日本と同じく警察の緊急通報番号は110番です。そのため、110番元素が発見された際には一部の科学者の間でジョークのネタとして親しまれ、研究所内でもちょっとした話題になりました。
110番という番号にちなんで、冗談でポリスチウムと呼ぼうとした科学者がいたという逸話があります。もちろん正式な申請はされませんでしたが、研究者たちのユーモアを感じさせるエピソードです。
周期表では白金の真下に位置する貴金属の仲間です。もし寿命が長ければ非常に美しく重厚な金属になったはずですが、数ミリ秒で消滅してしまうため、宝飾品にするのは絶対に不可能です。
半減期がミリ秒単位のため、1グラムを集めることは物理学的に不可能です。市場価格はもちろん存在せず、いくらお金を積んでも一瞬で別の元素に姿を変えてしまう幻のスーパープラチナです。
新元素を作るために、加速器で飛ばす弾丸となるビームの原子核を炭素から酸素、鉄、そしてニッケルへとどんどん重くしていきました。合成の限界に挑むパワーアップの歴史です。
理論的には合成可能だと予想されていましたが、加速器の性能向上やビームの強度アップなど、技術的な壁を乗り越えて実際に110番を作り出すまでに約10年という長い年月がかかりました。
都市の名前がついていることと白金の仲間であることから、SFの空中都市や宇宙要塞を守る未知の超硬合金のベース素材や、次元シールドを発生させるリングの材質として設定されることがあります。