カッターナイフで切れるほど柔らかい金属ですが、水に入れると水素を出して大爆発する超危険な性質を持ちます。しかし猛毒の塩素と結びつくと、人間が生きていくのに絶対に欠かせない食塩(塩化ナトリウム)に大変身します。危険な爆発物と生命の源という、極端な二面性を持つ不思議な元素です。
古代エジプトでミイラ作りに使われた天然の炭酸ソーダ(ナトロン)が語源です。日本ではドイツ語由来のナトリウムと呼びますが、英語圏ではソジウム(Sodium)と呼ばれるため、海外では注意が必要です。
自然界では常に他の元素と結びついており、単体の金属として見つけることはできません。1807年、イギリスの天才化学者デービーが、強力な電気を使って化合物を分解することで初めて純粋な姿を取り出しました。
水と猛烈な勢いで反応して水素ガスを発生させ、その熱で引火して大爆発を起こします。そのため実験室では、空気中の水分とも反応しないように、必ず灯油などの油の中に沈めて厳重に保管されています。
ナトリウムを燃やすと、非常に鮮やかな黄色からオレンジ色の光を放つ炎色反応を示します。高速道路のトンネルで使われているオレンジ色の照明(ナトリウムランプ)は、排気ガスや霧の中でも光が遠くまで届くためです。
人間の体液にはナトリウムイオンが溶けており、神経の命令を脳から筋肉へ伝えるための電気信号を作るという超重要な役割を担っています。汗をかいて塩分が不足すると、足がつったり痙攣したりするのはこのためです。
海という無尽蔵の資源があるため、塩化ナトリウム(食塩)としての価格はタダ同然の安さです。金属ナトリウムに加工しても1グラム数円程度ですが、危険物であるため一般人が購入するのは非常に困難です。
植物油や牛脂などの脂肪に、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を混ぜて煮込むことで、私たちが毎日使っている石鹸が完成します。古代から伝わるこの化学反応のおかげで、人類は感染症から身を守ることができました。
熱を非常に伝えやすい性質を利用して、次世代の原子力発電所(高速増殖炉)において、ドロドロに溶かした液体ナトリウムが冷却材として使われます。しかし水に触れると爆発するため、究極の安全管理が求められます。
炭酸水素ナトリウム、いわゆる重曹のことです。ケーキやパンの生地に混ぜて熱を加えると、分解されて二酸化炭素のガスが発生します。この細かい泡のおかげで、スポンジケーキはふっくらと美味しく焼き上がるのです。
スパイ映画やアクション小説では、理科室や工場に追い詰められた主人公がナトリウムの塊を水槽やトイレに投げ込み、大爆発を起こして敵から逃げるという、科学知識を活かした定番の脱出トリックとしてよく登場します。