量子力学の基礎を築いたデンマークの天才物理学者ニールス・ボーアに由来する超重元素です。寿命が極端に短く実用的な用途は一切ありませんが、ドイツの研究所がビスマスとクロムを融合させるという新しい手法で合成に成功し、冷戦時代の米ソの発見競争に新たな風を吹き込んだ歴史的な物質です。
原子の構造モデルであるボーア模型を提唱した偉大な物理学者ニールス・ボーアにちなんで命名されました。アインシュタインと並び称される20世紀物理学の巨人の名前が周期表に加わりました。
アメリカとソ連が新元素発見を競い合う中、ドイツの重イオン研究所であるGSIが独自の技術で合成を成功させました。ここからドイツによる怒涛の新元素発見ラッシュが幕を開けます。
安定したビスマス209の標的に、クロム54のビームを衝突させる冷たい核融合という画期的な手法で合成されました。余分な熱を出させずに重い原子核同士をそっとくっつける神業です。
当初ドイツのチームはニールスボーリウムという名前を提案しましたが、国際機関はフルネームではなく姓だけにするというルールを適用し、短縮されてボーリウムという名前で正式決定しました。
数秒で消滅する原子をガスの中に通す極限の実験により、周期表で真上にあるレニウムと同じような揮発性の化合物を形成することが分かりました。超重元素でも周期律が生きていることの証明です。
ニールス・ボーアの息子であるオーゲ・ボーアも、後にノーベル物理学賞を受賞しています。親子二代で物理学の歴史を塗り替えた天才の系譜が、ボーリウムという元素名にも輝きを与えています。
商業的な価格は存在しません。巨大な加速器を何週間も休まず稼働させてやっと数個の原子を作ることができるため、もし金額に換算すれば天文学的な莫大なコストがかかることになります。
核融合の際に熱を持たせないことで、せっかくできた重い原子核がすぐに割れてしまうのを防ぐ画期的な手法が実証されました。この手法が、その後の新元素発見の強力な武器となっていきます。
寿命がミリ秒単位の同位体もあるため、人間が目で見て確認する隙は全くありません。超高速のコンピューターと精密なセンサーによる自動検出システムが不可欠な、情報戦のような実験でした。
量子力学の父であるボーアの名前を持つことから、SF映画などでは時空を超えて情報を伝える量子通信機や、次元の歪みを観測する特殊な超重力センサーの媒質として設定されることがあります。