数々の新元素を生み出してきたロシアの原子核研究所がある街「ドブナ」にちなんで名付けられました。寿命が数秒しかないため用途はありませんが、冷戦時代の米ソの激しい手柄争いの末に、平和的な解決の象徴としてロシアの地名が採用された、ドラマチックな歴史を背負う超重元素です。
ソ連(現在のロシア)にある合同原子核研究所の所在地、ドブナ市にちなんで名付けられました。アメリカのバークレー研究所と並び、数々の超ウラン元素を合成してきた科学都市の栄誉を称えた名前です。
ラザホージウムと同様に米ソで激しい発見争いが起き、アメリカ側は核分裂の発見者オットー・ハーンにちなんで「ハーニウム(Ha)」と命名し、長年西側諸国ではこの名前が使われて大混乱となりました。
一方のソ連側は、デンマークの物理学者ボーアにちなんで「ニールスボーリウム」を提案していました。一つの元素に対して、国によって全く違う名前が使われるという異常事態が数十年間も続いたのです。
1997年の国際機関の最終裁定で、104番をアメリカ案(ラザホージウム)、105番をロシアの地名(ドブニウム)とすることで、長きにわたる米ソの命名権争いはついに平和的な痛み分けで決着しました。
周期表で真上にあるタンタルと性質が似ていると予想されていましたが、極微量の原子を使った実験の結果、むしろさらに上にあるニオブに近い奇妙な振る舞いをすることが判明し、科学者たちを驚かせました。
性質が予想とずれた理由は、原子核が重すぎて電子が光速に近い速度で動く相対論的効果によるものだと考えられています。超重元素の世界では、これまでの周期表の常識が少しずつ通用しなくなってくるのです。
ロシアの研究所では、アメリシウム243の標的にネオン22のビームを衝突させて合成に成功しました。非常に低い確率でしか原子が融合しないため、広大な砂浜から一粒の砂金を探すような過酷な実験です。
最も長寿命の同位体でも半減期は約28時間しかなく、実験で主に使われるものは数秒で消滅します。目に見える塊を作ることは不可能であり、市場価格という概念すら存在しない、物理学の極限に位置する物質です。
生活の中で役に立つことは永遠にありません。しかし、相対論的効果によって化学的性質がどう変化するかを調べるための貴重な探針(プローブ)として、最先端の理論化学と原子核物理学に貢献しています。
米ソの激しい命名争いや、性質が予想外に変化するというエピソードから、SFミステリーなどでは冷戦時代に極秘裏に開発され、制御不能となって歴史から抹消された架空のエネルギー兵器の素材に選ばれます。