原子の中心に原子核があることを発見した偉大な物理学者ラザフォードにちなんで名付けられました。ここから先は寿命が数秒という「超重元素」の未知の領域です。実用性はゼロですが、冷戦時代の熾烈な米ソの命名権争い(超フェルミウム戦争)の最大の象徴として歴史に名を残しています。
原子の中心に小さくて重い原子核が存在することを発見した、ニュージーランド出身の物理学者アーネスト・ラザフォードの名前が由来です。現代の原子モデルの基礎を築いた彼の功績は計り知れません。
104番以降の元素は超重元素と呼ばれ、寿命(半減期)が極端に短くなります。ラザホージウムの同位体の多くは数秒から数ミリ秒で崩壊して消えてしまうため、肉眼で見ることは永遠に叶いません。
ソ連のドブナ研究所が先に発見したと主張し、自国の物理学者にちなんで「クルチャトビウム(Ku)」と命名しました。長年、東側諸国ではこの名前が使われており、科学界を二分する大きな混乱を招きました。
一方、アメリカのバークレー研究所も独自の合成法で発見を主張し「ラザホージウム」を提案しました。冷戦を背景にしたこの熾烈な発見者・命名権争いは「トランス・フェルミウム戦争」と呼ばれています。
論争は泥沼化しましたが、1997年に国際機関(IUPAC)が最終的な裁定を下し、アメリカ案のラザホージウムが正式名称として採用されました。世界の科学の歴史に残る、長く熱い戦いでした。
周期表ではチタンやジルコニウム、ハフニウムの真下に位置する遷移金属です。数秒で消えるわずかな原子を使った神業のような化学実験により、実際にハフニウムとよく似た性質を持つことが確認されています。
カリホルニウムなどの重い標的に、炭素や窒素などの原子核のビームを光の速さの10パーセントという猛スピードで衝突させて作られます。巨大な加速器と莫大な電力が必要な、究極の力技による合成です。
作られた瞬間から凄まじい勢いで放射線を出して別の元素に崩壊するため、1グラムの塊を集めることは物理法則上不可能です。製造コストは天文学的ですが、価格をつける対象がそもそも存在しません。
原子核が重すぎると電子が光の速さに近いスピードで回るため、相対性理論の影響が現れて化学的な性質が少し変化します。ラザホージウムはその奇妙な現象を確認する最先端の格好の実験台です。
原子核の発見者の名と超重元素という響きから、SFゲームやアニメでは、宇宙戦艦を覆う鉄壁の超重力バリアの発生装置や、空間を固定する次元アンカーの素材として、架空の同位体が設定されることがあります。